便秘になると、水を普段より多く飲む、牛乳を飲む、などいろいろと工夫されるのではないでしょうか。それでも効果がなく何日も出ないとなると、薬局に行って下剤や便秘薬を買って飲むか、病院に行って便秘薬をもらおうと考えます。
実際に、私もそういうプロセスを一通り通りました。おそらく、同じような便秘対策をしておられる方も多いのではないでしょうか。
また、慢性的な便秘で苦しんでいる方は、毎日便秘薬を飲んでおられるかもしれません。今回は、自分自身の経験を活かし、便秘の改善に必要な情報を開示します。
もくじ
私の便秘体験
私はもともと農家出身だったので、小さい頃は野菜や海で採れたものなどをいただいていました。そのおかげで、小さい頃は便秘での悩みというのはありませんでした。高校生の頃からヨガや断食などに興味を持ち始めましたが、その頃からかえって体調に敏感になりすぎてしまう傾向がありました。
最初の便秘症が現れる
私が便秘症になったのは、親元を完全に離れた大学時代が最初でした。親元を離れると生活は不規則になるし、できあいの食事となるので便が滞りがちになりました。
そこで、牛乳を大量に飲んだり、センナ(便秘薬として市販されている、アフリカ原産の植物でマメ科カワラケツメイ属のハーブ)を飲んだりといろいろ工夫をしました。しかし、思うような結果がなくて辛かった記憶があります。「これが便秘解消に一番だ」という決定的な便秘薬はありませんでした。
実はこれらの方法は危ない素人考えによる便秘対策だったのです。
牛乳を大量に飲むという便秘対策はやめよう
まず、牛乳を大量に飲むということは、体にとって良くありません。
「日本内科学会誌」に、牛乳の飲み過ぎで下痢と下血が続いた事例があります。患者さんは、80歳の方で10年から 20年にわたって、毎日3回350mlの冷たい牛乳を飲んでいたそうです。
その結果、下痢や下血が続くようになったというのです。牛乳を飲むのをドクターストップしたら、下痢や下血はたちまち治ったといいます。
牛乳を飲むとお腹が下りやすいのは、日本人は一般的に牛乳に含まれている乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が少ないために起きる生理現象です。消化されない乳糖が小腸に入ると、それを薄めるために水分を引き寄せます。このことから下痢を生じるのです。
小腸から大腸に入った乳糖は、腸内細菌によって発酵して酸性便になります。このように、実際に牛乳を飲むことで体調が悪くなっている方もいることから、大量の牛乳を飲んで下剤のように使うことはおすすめできないのです。
センナの長期使用はしない
また、センナに関しても、長期に使用していると大腸黒皮病(メラノーシス)という症状を発症することがあります。発症すると、腸の働きが悪くなったり、腸の粘膜が黒ずんだりと、粘膜だけでなく腸管内の神経にも影響が及びます。
センナの使用は、長期的にみるとデメリットが大きいです。かえって便秘が悪化したり、自力排便ができなくなったりします。
中年以降になって便秘が悪化した頃
中年になってから、仕事に関するいろいろなプレッシャー、介護のこと、家族間でのトラブルなどさまざまなストレスから便秘がひどい状況になってきました。そこで、いろいろと情報を得て、赤ちゃんにも使えるという穏やかな下剤「ミルマグ」(酸化マグネシウムの液体)を薬局から買って必要に応じて使っていました。
これは、赤ちゃんでも使えるので安心ですし、実際に重宝しました。いつも旅行に行くときには持参するくらいの必需品になっていました。その「ミルマグ」であっても、旅行で便秘になった日に使って効果がなく、次の日に量を増やすなどしてしのぐことがありました。
「他に便秘に対して効果的なものはないだろうか」と思っていました。何かすっきりできる方法の模索をしていたのです。そんなおりに、ある本から情報を得て腸内洗浄をしてみようというアイデアが浮かびました。
それは、ベストセラーになった「病気にならない生き方」(全米ナンバーワンの胃腸内視鏡外科医である新谷 弘実著)に掲載してあり、著者である新谷氏自身も毎日腸内洗浄をしているとあったからです。
実際に、その本にあった会社から腸内洗浄キットを取り寄せて、自分で腸内洗浄をしてみました。このことによって、排尿するときも痛みを感じることになりました。
結果、私はさらなる排便トラブルをかかえるようになったのです。個人的な体験からわかったことは、「腸内洗浄は決してしてはいけない」ということです。もしどうしてもという場合は、専門の医師による指導のもとで腸内洗浄をされることをおすすめします。
薬の処方は、どのようにされたのか
そういった経過と、さらなる仕事上のストレスを抱えていたこともあって、便秘はひどくなっていきました。とくにひどい便秘は、なんらかの食べ物(鮮度の下がった魚が原因ではないかと今は思っている)が原因で、1日に何度もトイレに行く激しい下痢の後に長期の便秘になるのです。
何日もお通じがないと不安にかられて病院に行きました。何回か、そういうときがあってそれぞれ違った病院に行きました。
それぞれの病院では、対応が違いました。
ある病院では、「何日も便が出なくてもそのうち出るから心配ない」と整腸剤を処方されました。この整腸剤という発想は、のちにいろいろと学ぶと悪くない選択だったと思っています。そこでの薬は「ラックビー」と「ミヤMB」(ミヤビーエム)という整腸剤で、乳酸菌を固めた錠剤というイメージを持っていただけたらいいです。
そのときは、お腹のハリ感があって苦しかったのと腸のことなどを学んでいなかったこともあって、効果あるのか疑問をいだいていました。ともかく、「早くすっきりしたい」の一心だったからです。
他のところでは、漢方薬を出してもらったこともあります。(その漢方薬はツムラで銀と青のストライプが入ったパッケージ。桃核承気湯:とうかくじょうきとう)さらに、何日も出ない場合は、座薬を出してもらいました。実際に、苦しいときにその座薬を使いました。
しかし、それでも決定的なものを見出せませんでした。
どうしようもなく便秘が辛いので、便秘外来をインターネットで探して行くことにしました。そこで処方された薬は、酸化マグネシウムの錠剤でした。あと、お腹のガスを抜くお薬も同時にいただきました。
それでも、決定打を感じられずにいました。そこで、「断食すれば免疫力が高くなる」という本を参考にして、新たなる解放があるのではないかと思って断食道場にいきました。結局、断食道場では、かえってやせ衰えてしまって便秘がひどくなってしまい、便秘入院することになったのです。
入院以来、下剤として便をやわらかくする酸化マグネシウムの量が1日3gと多く、その日の様子を見ながら大腸を刺激するピコスルファートナトリウム内服液を何滴かコップ一杯のお湯にいれて夜に飲むことをしていました。それにプラスして、漢方薬や整腸剤なども同時に飲むようになっていました。
その下剤が効いたときは、水便が1ヶ月以上続いたうえに激痩せが始まって最悪でした。水便になったなら、「すぐに下剤をやめればいいではないか」と思われるかもしれませんが、やめられない心理があるのです。
その心理とは、「やめたら、またあの辛い便秘で苦しむのではないか」という恐怖が沸き起こってくるのです。便秘薬をやめようとすると、それがストレスとなり腸の働きが悪くなるという悪循環を招きます。
だから、わかっていてもやめられないのです。さらに、その時の医師の指導が、「水便でも、出ないよりはましだ」という、いま考えるととんでもない指導だったのです。水便が1ヶ月程度続いたことが原因ではないかと思える、1ヶ月に9kg減るという激痩せ状態になりました。
「もう、普通の自然排便はできないのではないか」という恐怖にさらされる毎日を過ごしながら、下剤を飲むという葛藤がありました。医師からは、「自分で下剤を調整してください」と言われるので、毎日どのくらいの下剤を飲んで、お通じがどうあったかという記録をとりながら調整していました。
便秘で処方された主な薬
何日も便秘になるということが何回かあって、そのつど病院を調べて行ったことでさまざまな薬を処方されました。主な薬をまとめてリストアップします。このリストはきわめて安全性の高いものですが、個人的には漢方の薬は飲みづらかったので何日か飲んでやめました。
1:ラックビー
整腸剤:有効成分はビフィズス菌で腸の善玉菌を増やすことによって、便秘や下痢に有効。弛緩性便秘に効く
2:ミヤBM
整腸剤:宮入菌という酪酸菌の一種を含んでいるので、腸内細菌のバランスを整える。胃酸で殺菌されづらく、抗生物質の耐性もある
3:酸化マグネシウム
腸内に水分を引き寄せ便を軟便化する。習慣性が少なく、長く使っても効き目が落ちない。心臓病や腎臓病のある人は使う量に気をつける
4:ピコスルファートナトリウム内服液
大腸を刺激して腸の運動を活発にする。腸の運動が低下している弛緩性便秘に向いている
5:桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
漢方薬:血の巡りをよくする薬。動悸、更年期障害、便秘、精神不安などに効く体力のある方用
6:大建中湯(だいけんちゅうとう)
漢方薬:体を温めて胃腸の調子をよくする。腹痛やお腹の張りを和らげる。弛緩性下痢や便秘に効き、腸閉塞の予防にも用いられる
便秘薬から解放されることの必要性
便秘入院してから、下剤を毎日自分で調節しながら飲むという不便さを感じながらも、やめられないジレンマがありました。もう、下剤から解放されることはないのだろうというあきらめモードです。とはいっても、薬からなんとか解放されたいという思いはあるのです。
「便秘薬が習慣化されることは好ましくなく、解放されることが必要だ」と薬剤師であり栄養学博士である宇多川久美子(うたがわくみこ)氏は主張します。彼女は「薬剤師は薬を飲まない」の著書で、薬に頼ることによる弊害を述べています。便秘に関する記述を以下にまとめます。
「便秘なのに何もしないなんて大問題」というCMがありました。これは、あくまでも便秘薬をアピールするためのものです。だからといって「一刻も早く薬局に行って便秘薬を買おう」ではありません。
便秘薬は、強制的に大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)をさせるものであり、一時的に使うなら効果はあります。しかし、長期的になると効かなくなります。ちょうど、頭痛薬と同じようなものです。 身体というものは案外怠け者の部分があって、便秘薬で便をだすという習慣を作ってしまうと「薬がやってくれるから私は動かなくていい」「薬さん、私のかわりにがんばってね」となってしまうのです。 便秘薬は、飲めば飲むほど大腸の働きが低下していき、最悪の場合は、蠕動運動が止まってしまい自力では排便できなくなって腸閉塞を起こしてしまうこともあります。 |
便秘薬からの解放
もう下剤から解放されることはないだろうというあきらめモードだった私が、どういったいきさつで解放されたのかをこれから述べていきます。
薬を使いながら、腸と精神を整える
大概の便秘改善の情報は、薬のことだけになります。ところが、実際に体験すると「心理的なケア」が必要だということがよくわかります。加えて、整腸することの情報と確信がないと不安が増幅してしまいます。
便秘で入院したときから、毎日毎食ごとに酸化マグネシウムを飲み、調子をみて夜にピコスルファーム内服液を飲んでいました。その日の調子によって薬を変えるというのがとても難しいのです。
このときに、有機玄米を買っている農家さんと話をして、その農家さんが出している玄米コーヒーも試しに飲んでみることにしたのです。加えて、腸に関するいろいろなことを教えていただきました。腸内細菌のことや、どういったケアをするのかなど健康のアドバイスをいただいたのです。
日常の生活リズムをまず整える
酸化マグネシウムを飲みながら、コーヒー玄米に整腸剤であるミヤBMやラックビーなどを飲んでいました。いきなり薬をやめようとするとそのこと自体「飲まないで大丈夫だろうか」という不安になります。
そこで、毎日の排便をできるようにすることによって自信をつけて、徐々に薬を減らす方向に持って行くようにします。もし、つまり気味だと思ったら酸化マグネシウムを増量したり、ピコスルファームを飲んだりします。
私の場合は、薬と同時に農家さんからいただいた玄米コーヒーを併用して飲んでいました。すると、だんだんと下剤がいらなくなってきました。そこで、整腸剤だけにしたのです。玄米コーヒーと整腸剤を何ヶ月も続けていき、日常のリズムが整ってきた段階で、お昼に整腸剤を飲むのをやめました。
こうして徐々に日常のリズムを整えることによって、便秘薬を自然に減らすことができたのです。徐々に減らすことのメリットは、毎日の排便できる自信がついた段階で薬を減らすので精神的な不安を回避できます。
まとめ
ここまでをまとめます。便秘気味で便秘薬を時折使うというのは問題ないですが、それが毎日の習慣になっていると長い目でみると自然排便ができなくなるリスクがあります。それを防ぐためには、いきなり便秘薬をやめると「精神的な不安」が起きてくることがあるので、ステップをつけて徐々にやめるようにします。
そのステップは以下になります。
- 酸化マグネシウムや整腸剤を毎日毎食時に飲んでいる
- 酸化マグネシウムを毎食時のところをお昼に飲むのをやめる
- 同時に玄米コーヒーや水溶性の食物繊維をもつ海藻などを毎食時に食べたり飲んだりする
- 酸化マグネシウムをやめて毎食時に整腸剤と玄米コーヒーと海藻を食べたり飲んだりする
- 整腸剤、玄米コーヒー、海藻を毎日毎食時に食べたり飲んだりする
- 整腸剤をお昼に飲むのをやめてみる
- 整腸剤を完全にやめる
今は便秘薬も整腸剤飲んでいなく、その代わりにヤクルトやヨーグルト、玄米コーヒー、ゴボウ茶、玄米茶などお通じに良いと思われる食品をとるようにしています。もちろん、毎日の運動を意識したり、散歩をしたりもしています。
くわえて、ストレスマネージメントとして「認知行動療法」に関する本から物事の受け止め方、考え方を学んでいます。ステップを踏みつつ代用品を自然の食品にし、ストレスに負けない力を養えば、便秘薬から解放されます。便秘薬のいらない解放ライフを実現しましょう。